教会音楽のはなし 3 

オルガン その1

(「LOGOS No.15」 1990.9)

横山 正子 オルガニスト

 教会の礼拝では、讃美歌の伴奏や前奏・後奏にオルガンが多く用いられていることは、皆さんご存知のとおりです。なぜなのであろう、と考えたことがありますか。ピアノでもよさそうなのに・・・。もちろんピアノで奏楽をしている教会もあります。でも、やっぱりオルガンが圧倒的に多いでしょう。

 オルガンがキリスト教会の典礼用楽器として正式に取り入れられたのは、紀元7世紀、ローマ教皇ヴィタリアヌスの時代でした。しかしオルガンの原形をたどると、紀元前数世紀にまでさかのぼります。パンパイプ、あるいはシュリンクスと呼ばれる笛がそれです。長さの異なる何本かの管が、ちょうど木琴ように並べられ、下から生きをふきこんで鳴らします。パイプに空気を送って奏する、パイプオルガンの祖先です。

 ここで気がつくことは、オルガンが「息(空気)」の楽器だということです。オルガンは人が声をあげて歌うことと同じように、息によって鳴る楽器です。古代の教会では、それまで無伴奏だった典礼の歌を支える楽器としてオルガンを取り入れました。それ以来現代に到るまでオルガンによる奏楽が行われている理由の一つは、オルガンが人の声と似た特質をそなえている点にあるのでしょう。オルガンに支えられることによって、会衆の歌は厚みを増し、安定感を得るのです。

 ここまで述べてきたオルガンとは、主にパイプオルガンを指しますが、「人の声に和す」ということは、パイプオルガンに限ったことではありません。欧米ではオルガンといえパイプオルガンのことなのですが、日本ではまず足踏み式のリードルガンを思いうかべる方が多いでしょう。明治以来親しまれてきましたが、最近は、電子オルガンを使う機会が多くなりました。教会用として優秀な機種が次々に開発されています。

 パイプオルガンより手軽に設置でき、リードオルガンよりはるかに音量があり、いろいろな面で重宝といえるでしょう。いうまでもなくこれは「息の楽器」ではありませんが、日本のキリスト教会の現状を考えれば、与えられた楽器を生かして会衆とともに生き生きとした讃美ができるよう、オルガニストは努力せねばなりません。

 わたくし自身、教会・大学あわせて一週間に4回から6回の奏楽をしておりますが、パイプオルガンを使うのはそのうち2〜3回であとは電子オルガンです。この「文明の利器」に、会衆の歌とひとしい生命力を吹き込むような、そんな奏楽をしたいものです。

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