宗教音楽のはなし 7

(「LOGOSNo.25」1991.9)

横山正子 オルガニスト

 かつては、教会こそが芸術を生み出す母体でした。音楽、美術、文学、建築、それらはまた思想、哲学とも密接につながって、キリスト教文化を形成しました。なぜ教会が芸術を生んだのでしょう。それは、芸術的な価値観と信仰とは表裏一体、相たずさえて歩むものだからだと私は思います。

 信仰は芸術的価値観なしには理解できないのではないでしょうか。芸術的価値観を持つということは、(誤解なきよう)たんに何か楽器を操れるようになるとか、絵が描けるようになるとか、いうことではありません。芸術的価値観を持つことは、普遍を呼吸すること、永遠なるものを実感すること、それを観念としてではなく、日常の中で自分の精神の重要な部分として認識して生きることができるようになることです。

 「芸術」とは、もともと人間の精神の本質的な部分を保存するためのものです。人間は永遠に一定のものではなく、進化していくものですから、その過程における精神の保存がつねにおこなわるのです。

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