断絶
山本三和人
人類が直面してきた[断絶]の第一は、人間と神との断絶です。そして、第二は人間における当為存在と現実存在の断絶であり、第三は人間と人間を隔てる断絶です。そして、これらの三つの種類の[断絶]は、それぞれ異なった原因によってつくり出される三つの別々の現象ではなく、一つの基礎的事実によって必然的につくり出される異現象です。古代や中世に、神と人との再結の道としての宗教が、他の事柄よりも重んじられていたのは、人間と神との「再結」すなわち断絶の克服なくしては、あらゆる人間の「断絶」の克服は得られないと信じていたからです。しかし、人類がたくましい意志の力を発揮して、自らを神の支配から解放し、自分のことを自分で主体的に解放する道を選んでから、早くも数百年が流れました。そして、人類が自ら蓄えた知識と、習得した技術と、開発した文明の利器によって、人間を隔てる溝を埋め、壁を壊し、文字通り輝かしい自由と平和と繁栄の理想を実現する日も遠い将来のことではないように思われたこともあります。しかしここまで辿ってきた旅路の果てで人類が見たものは、いちだんと深められた人間の疎外と断絶でしかありませんでした。すなわち、神を排除することによって断絶を取り戻そうとした人類の企てが、いっそう深刻な「断絶」へと自ら追い込んでしまったのです。