解説   大柴 恒

 山本三和人先生の礼拝証言は、字数にして4000字(400字詰め原稿用紙10枚)、それを40分程度でお話になります。そのお話には全く無駄な言葉が入りません。初めから終りまで、研ぎすまされた言葉で聖書の真理が説きすすめられていきます。ですから、その中から抜粋して文章を取り出していくということは至難の技です。今回、事務局でまとめてみた教会機関紙『ロゴス往来』特集号[聖書の世界]は、ご覧のように右の頁を680字でまとめ、左の頁は渡辺禎雄先生の版画を載せました。
 山本先生の文章は、これまで刊行されました『文学的神奉仕』『続文学的神奉仕』『言葉の喪失』と『月報LOGOS』(1993.1-1994.3)掲載の証言「新しい戒め」の中から抜粋したものです。先生が説き証す真理のみ言葉は、人間は絶対に神になってはいけないということ、そして、神が人となられたイエス・キリストを教会の主・世界の主・歴史の主と告白する信仰に生きる、この宣教姿勢で貫かれています。他に余分な説明はありません。
 渡辺先生の版画は、かつて目白時代からロゴス教会との関わりの中で発行されてきた『渡辺禎雄聖書版画カレンダー』の画が中心です。渡辺先生がロゴス教会との交わりの中でどのような版画を製作されていたかを記録しておくことは、とても大事なことです。先生の描く聖書の世界をじっくり観察し、学んでみたいと思います。渡辺禎雄先生の聖書版画は、これとは別に、オリジナル作品が教会に数多く残されていることはご承知のとおりです。ちなみに、渡辺禎雄先生は、本年(1996)1月8日、82歳で天に召されました。現在、全国各地で『渡辺禎雄聖書版画展』が開催されています。
 本書の文と画は、必ずしも一致しているとは言えません。しかし、山本三和人先生のメッセージを聞き、渡辺禎雄先生の聖書版画をじっくり観賞していますと、『聖書の世界』が、深く、広く、ひろがっていく思いに満たされることでありましょう。
 私が堂守りの仕事して、ぼつぼつ倉庫の片付けをしていて思ったことは、ロゴス教会には貴い遺言(testament)が隠されている、それが埃にまみれて埋もれてしまっていく、そんな気がして、これをきっちり発掘しておきたいという気持ちが、このような作品となりました。消えてしまってはいけない最も中心的なものは、このロゴス教会が働く神の言葉、すなわち山本三和人牧師の聖書の言葉であり、そして世界的に有名な型染版画家渡辺禎雄先生の聖書版画の何点かです。そのほかにも、解放されたロゴス教会の講壇が語る、兄弟姉妹の証言があります。これもきっちり『ロゴス往来』紙に記録しておきたいと思っています。(1996.12クリスマス)

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