宗教ブーム
山本三和人
これほど科学が進み、これほど文明が高揚し、飢えと貧しさから解放されて、ほとんどの人が中流意識をいだいているこの時代、この国に、なぜ宗教ブーム現象が起こるのでしょうか。現代の人々は、何もかも商品化して金に換える錬金術を身に着けているようで元手のかからない神や仏や霊を売って、どれほど大きな利益を得ても宗教法人の名において行えば、税金がかからないというのは魅力ですし、しかも一方には額に汗して得た大事なお金を支払ってまで、ご利益を手に入れようとする人が何十万、何百万といます。現代人は、中流意識やゆとり感は見せかけであって、本当はどうすることもできない不安に怯え、自由も安らぎも失っているようです。もし、神や仏や霊を商品化して商いをしたり、代価を支払って買い取ったりすることで宗教復興や宗教ブームの現象が興るとしたら、それは見せかけの宗教復興や宗教ブームに他なりません。なぜなら、そこでは人間と人間の幸せが中心であり、神や仏や霊は人間の幸福達成の手段に過ぎないからですから、必ず悲劇をもたらします。近世人も現代人も、自分の命を得るために動かしたその手で自分の首を絞め、自分の時代を終わらせてしまいました。「自分の命を得ようとする者は、それを失い、わたしのために命を失う者は、かえってそれを得るのである」(マタイ10:38)